社会保障の落とし穴

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第18回:まさかの無年金 〜 専業主婦時代の「カラ期間」があるから大丈夫と思っていたのに…

25年以上の公的年金の受給資格期間があるのに、無年金となっている人がおよそ3万人いるという驚く内容が各新聞に掲載(09年7月)されていました。年金を受給できないと思っていた主な理由の1つに、「カラ期間」の制度があまり知られていないことがあります。
しかし、年金相談の現場では、そう簡単な例ばかりではありません。今回は、「カラ期間」のことを中途半端に理解したばかりに、「無年金」になってしまった気の毒な女性の例をお話します。ときとして、女性の好きな井戸端会議の情報は、人生設計を狂わすこともあるのです。


年金は何年加入したら受給できるのか?

公的年金は原則25年以上加入して原則65歳から受給できます。ただし、現在、厚生年金や共済年金のみに加入した人などは、20年以上(昭和27年4月2日以降は21年〜24年)加入などで特別に公的年金が受給できます。主な受給例は次のとおりです。



カラ期間とは!

「カラ期間」は合算対象期間ともいいます。年金を受給資格に必要な期間(原則25年)に含めますが、年金制度に加入していないので年金額には反映されない(年金額はゼロ)期間なのです。
カラ期間の主なものは、昭和36年4月〜昭和61年3月までの会社員や公務員などに扶養されていた主婦のケースです。(詳細は第4回参考)


任意加入期間中に、任意加入しなければカラ期間

昭和61年3月以前は、会社員などに扶養されていた配偶者は国民年金の加入は任意加入でした。国民年金の加入は自由だったのです。このとき任意加入して保険料を納付した期間は年金額に反映されます。任意加入しなかった期間がカラ期間になり、年金額に反映されませんが、年金額の受給資格期間に含めます。以下はよくある例です。

ところが、すべての人がよくある例に収まるとは限りません。ちょっとした勘違いで年金がもらえない人もいます。例えば次のA子さんの場合がそうです。詳しくみてみましょう。

当時、A子さんは、主婦仲間から「夫が厚生年金に加入しているから、主婦が年金に加入する必要はない。任意加入してもしなくても同じだから、任意加入する意味がない」と小耳に挟みました。A子さんは、主婦仲間の言葉をあまり深く考えもせず、せっかく国民年金に任意加入の手続きをしたのに、保険料を納付しませんでした。その後、60歳になり年金の請求のとき、社会保険事務所で加入歴を調べてもらってびっくり。年金の受給資格期間がないと告げられたのです。任意加入して保険料を納付しなかった15年間は「未納期間」になるのを知らなかったのです。

では、仮にA子さんが任意加入期間中に任意加入しなかった場合、任意加入中に任意加入して保険料を払った場合で年金額はいくら違うのか比べてみましょう。

任意加入期間中の状態で変わる年金額〜 A子さんの場合

任意加入期間中 納付内容 受給年金額
60歳〜 62歳〜 65歳〜(加算含)
任意加入しない カラ期間 11.0万円 30.8万円 39.6万円
任意加入して、保険料を納付した 保険料納付済期間 11.0万円 30.8万円 69.3万円
任意加入して、保険料を納付しない 未納期間 厚生年金10年+カラ期間2年<25年 なので、年金の受給資格を満たさず、年金額は0
70歳になるまで国民年金に10年間任意加入しても、25年をみたせず年金はもらえない。※1

※ 厚生年金加入中の平均給与 12万円とする(総報酬制を考慮せず)

※1 [参考]
    A子さんが60歳から8年間厚生年金に加入すれば、68歳から18年分の厚生年金を受給できる。(中高齢者の特例)


若いときの判断ミスで、最大損失約1,500万円!

今、巷には年金情報が溢れています。ただ、テレビや新聞など、限られた時間・紙面での情報は断片的にならざるを得ないこともあります。また、私たちが一方的に誤解して解釈している部分もあります。全体のニュアンスを考えず、一部分を取り上げて受け止めてしまうとA子さんのような悲劇になります。A子さんのこれから続く長い老後、無年金では心細い限りです。ちょっとした若いときの判断がこれほどまでに老後の経済を圧迫しようとは誰が想像したでしょうか。
仮にA子さんが65歳以降20年生存した場合、年金総額の最大損失は約1,500万円。「年金のこと知らなかった」の一言で済ますにはあまりに大きな代償といえるでしょう。

加入状況 受給年金総額
(65歳から20年生存の場合)
任意加入しない 906.4万円
任意加入して保険料を納付した 1500.4万円
任意加入して保険料を納付しない 0円


執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
ファイナンシャルプランナー(CFP)、社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/

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